本と映画

  • 最近読んでいた小説は、クリストファー・プリーストの『奇術師』です。この本は「このミス」の1位を取ったりもしていますが、もともと世界幻想文学大賞受賞ということで、いわゆるミステリー(推理小説)とは少々異なります。でも途中までどうしてもミステリの頭で読んでしまっていて、400ページぐらいでようやく切り替えることができました。ミステリーではありえない設定が登場するので。2人の奇術師の手記と、その子孫である男女のモノローグによって構成される本作は、とても緻密に構成されており、ミステリーを読むように注意深く読む必要があります。しかし作者が読者に仕掛けるトリックとか、叙述トリックとかそういうものはありません。奇術師の手記は謎を隠しながら書かれ、ライバル同士の記述には同じ出来事がそれぞれ異なる視点で書かれていますが、素直に読むことが重要です。まあ、とにかく全く長さを感じさせない描写で、とても面白い小説なことは間違いないです。19世紀末イギリスの興行業界・社会風俗もよく分かります。
  • で、この日はこの映画を原作にした映画「プレステージ」を見に行きました。原作は手記・日記が中心なこともあり、映像では大幅に異なって当然ですが、思っていたよりは原作に忠実でしたね。ネタバレになるのであまり書けないけど、原作と同様、マジックのトリックともちょっと違う部分があって、そのへんに違和感を持つ人がいるのでは。CMだとミスター・マリックが出てくるし、なんか宣伝の方法が間違っているような・・。原作を読んだ上で見ると、かなり楽しめました。